外国人観光客に喜ばれる日本のお土産|和小物を選ぶときの視点

外国人観光客に喜ばれる日本のお土産|和小物を選ぶときの視点

はじめまして、三輪沙織です。
百貨店の和雑貨売場でバイヤーを12年務め、いまは観光地の商店街で小売店の売場づくりをお手伝いしています。

仕事柄、知人からよく受けるのが「海外から友人が来るのだけれど、何を渡せば喜ばれる?」という相談です。
お菓子にするか、雑貨にするか。
雑貨なら、どれを選べば失敗しないのか。
迷っているうちに当日が来てしまった、という話もよく聞きます。

この記事では、観光庁の調査データと、私が売場で見てきたことをもとに、和小物を選ぶときの視点をまとめました。
相手の国や関係に合わせた選び方、持ち帰りで困らないための注意点、2026年11月から変わる免税の仕組みまで取り上げます。

数字で見る、外国人観光客が日本で買っているもの

まずは、旅行者が実際に何を買っているのかを確認しておきます。
観光庁のインバウンド消費動向調査の2025年確報では、主な品目の購入率は次のとおりでした。

品目購入した人の割合購入した人の平均額
菓子類72.7%11,127円
衣類47.9%27,160円
化粧品・香水34.6%21,128円
医薬品27.0%11,882円
民芸品・伝統工芸品8.3%13,692円

※観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年確報の集計表(全国籍・地域)より

民芸品・伝統工芸品を買った人は8.3%で、数字だけ見ると少数派です。
それでも、買った人は1人あたり1万3千円ほどを使っています。

誰もが買うものではないけれど、好きな人はじっくり選んで買う。
和雑貨の売場に立っていたころの手ごたえとも、よく重なる数字です。

和小物にお金を使うのは欧米の旅行者

同じ調査を国・地域別に見ると、民芸品・伝統工芸品の購入率には大きな開きがあります。

国・地域民芸品・伝統工芸品の購入率
スペイン27.0%
イタリア26.1%
フランス25.5%
ドイツ25.5%
英国20.1%
米国19.0%
中国6.4%
台湾5.1%
香港4.6%
韓国3.9%

※観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年確報の集計表より

欧州からの旅行者は、4人に1人ほどが和小物を買っています。
東アジアからの旅行者はどこも5%前後で、こちらは菓子類が圧倒的です(韓国は83.4%)。

欧米の友人なら、和小物はかなり喜ばれやすい贈り物です。
韓国や台湾の友人には、日本のお菓子を中心にして、和小物は小さなものを添える程度にするのも一つの考え方です。

和小物は「安いから」選ばれているわけではない

観光庁の2025年の年次報告書には、「一番満足した買い物」とその理由を尋ねた結果も載っています。
民芸品・伝統工芸品を挙げた人の理由は、次のとおりでした(複数回答)。

  • 伝統的・日本独特だから(54.0%)
  • デザインが良い・かわいいから(49.7%)
  • 日本製だから(44.1%)
  • 品質が良いから(36.5%)
  • 価格が手頃・自国より安いから(9.4%)

値段の手頃さを理由に挙げた人は、1割に届きません。
和小物を選ぶなら、安さより「日本らしさ」と「つくりの良さ」を基準にしたほうが、相手の期待に沿いやすくなります。

和小物を選ぶときに見ている5つの視点

ここからは、私が和小物を選ぶときに確かめていることを5つ紹介します。

1. 日本人が使っても「いいな」と思えるか

観光地のお土産売場には、外国の方向けに日本らしさを強調した商品がたくさん並んでいます。
にぎやかで楽しい売場ですが、贈り物にするなら「自分でも使いたいか」を一度考えてみてください。

この考え方をはっきり言葉にしている経営者がいます。
かんざし専門店「かんざし屋wargo」や和傘の「北斎グラフィック」を全国の観光地で展開する、株式会社和心の代表・森智宏さんです。

社長名鑑のインタビュー(2026年7月時点)で、森さんは社内で「外国人が好むから、この程度でいい」という妥協を禁句にしていると話していました。
自分が海外旅行をするときも、観光客向けの店より地元の人が通う店に行きたくなる、それと同じだという説明です。

バイヤー時代を振り返っても、海外のお客様が長く手に取っていたのは、日本のお客様にもよく売れている品でした。
森さんがどのような経緯で観光地の専門店を広げてきたのかは、森智宏さんの経歴と人となりを紹介した記事にまとまっています。

2. 使い方をひと言で説明できるか

和小物は、使い方がわからないと引き出しにしまわれたままになりがちです。
渡すときに「こう使うんですよ」と見せられるものを選ぶと、喜ばれ方がまるで違います。

わかりやすい例がかんざしです。
棒1本で髪がまとまると知って、驚く方は少なくありません。

かんざし屋wargoの公式コラムでは、髪を時計回りに2〜3回ねじり、頭皮から指2本分離れた毛束の中央あたりに上から挿す、という手順が紹介されています。
渡す前に自分で一度試しておけば、その場で実演できます。
同社の公式サイトによると、店には1,500種類以上のかんざしがそろっているので、相手の髪の長さや服の色を思い浮かべながら選べます。

かんざしは、江戸時代からお土産として喜ばれてきた品でもあります。
東京都の江戸つまみ簪の紹介ページによると、つまみ細工の櫛やかんざしは彩りがきれいで値段も手ごろだったため、参勤交代の折などに江戸みやげとして喜ばれたといわれています。
こうした由来をひと言添えると、品物に物語が生まれます。

ほかの和小物でも考え方は同じです。

  • 扇子は、開いてあおぐところまで見せる
  • 箸は、持ち方を一緒に練習してみる
  • 手ぬぐいは、拭く・包む・飾るの使い分けを伝える

3. 軽くて壊れにくく、持ち帰れるか

旅行者は、帰りのスーツケースの空きと重さをいつも気にしています。
陶磁器やガラスは美しい反面、割れる心配があり、かさばります。
大きなものを贈るなら、お店から配送してもらえるかを確かめておくと安心です。

持ち帰りのルールにも気を配りたいところです。

  • 包丁などの刃物は、ANAの国際線の案内によると機内には一切持ち込めない
  • 預け荷物に入れられるかは、航空会社と出発国の規則による
  • オーストラリアやニュージーランドでは、木や竹などの素材を使った品が入国時の申告対象になることがある

木の箸やつげの櫛、竹細工を贈る相手がこの2か国の方なら、「入国のときに申告してね」と伝えておくと親切です。

包み方にもひと工夫できます。
かんざしのように先が細いものや、漆の箸のように傷がつきやすいものは、箱やケースに入れてもらうと荷物の中で折れたりこすれたりしにくくなります。
和紙や風呂敷で包むと見た目は華やかになりますが、そのぶんかさばるので、相手の荷物の量を見て決めてください。

4. 相手の文化で引っかかる品ではないか

和小物の定番のなかには、相手の文化によっては縁起が良くないとされるものもあります。

台湾の新聞「自由時報」では、民俗の専門家が恋人への贈り物で避けたい品として傘と扇子を挙げていました。
中国語では「送傘」「送扇」の発音が「送散」と同じで、別れを連想させるためです。
同じ記事では、縁が切れるとしてはさみも挙がっていました。

中華圏の方、とくに恋人や親しい方に和傘や扇子を贈るときは、相手がどう受け止めるかを考えておくと安心です。

日本にも似た言い伝えがあります。
コトバンクに収録された日本大百科全書では、櫛は「苦死」の語呂合わせから俗信が広まったと解説されており、櫛をもらうことを嫌う伝承も紹介されています。
日本ならではの言い伝えなので、日本人の同行者がいる場で櫛を贈るときに頭の片隅に置いておく程度で十分です。

迷ったら、お店の人に「どこの国の方への贈り物か」を伝えて相談するのが確実です。

5. 本物であることを伝えられるか

満足理由の上位に「日本製」「伝統的」が並んでいた以上、品物の背景を伝えられるかどうかも大切です。

経済産業省の広報誌METI Journalによると、国が指定する「伝統的工芸品」は2025年10月末時点で47都道府県の244品目にのぼります。
産地の組合の検査に合格した品には、伝統マークをデザインした「伝統証紙」が貼られます。

産地の名前が言える品は、それだけで会話のきっかけになります。
和心の箸専門店「箸や万作」には、輪島塗や若狭塗の漆箸、京竹箸、九谷焼の箸置きなどが常時800種類以上並んでいると、同社の公式サイトで紹介されています。
「これは石川県の輪島で作られた箸なんですよ」と伝えられれば、それだけで贈り物の印象が変わります。

相手別に選ぶ和小物の早見表

ここまでの視点を、相手別に整理しました。

贈る相手選びやすい和小物添えたいひと言
欧州・米国の友人かんざし、扇子、手ぬぐい、漆の箸使い方の実演、産地の話
韓国・台湾など東アジアの友人日本のお菓子+箸置きや手ぬぐい小さな和小物を添える
中華圏の恋人・親しい方かんざし、箸、帯留め傘・扇子は相手の受け止め方を考える
仕事の取引先伝統的工芸品の箸、名入れの小物産地と伝統証紙の説明
ホームステイ先の家族人数分の手ぬぐい、箸と箸置きのセット家族で使える品だと伝える
オーストラリア・NZの方布や金属の小物木・竹製品なら入国時の申告

名入れは、相手の名前が入るだけで特別感がぐっと増します。
箸の名入れに対応している専門店もあるので、時間に余裕があれば店頭で聞いてみてください。

予算に決まりはありません。
参考までに、先ほどの観光庁の調査では、民芸品・伝統工芸品を買った旅行者の平均額は13,692円でした。
ただ、これは1人が旅行中にこの品目へ使った額の平均です。
1人の友人への贈り物なら、相手が気を遣わずに受け取れる数千円の品で十分です。
取引先やお世話になったホストファミリーには、伝統的工芸品のように背景を語れる品を選ぶと、金額以上に気持ちが伝わります。

観光客本人が買うなら、11月からの免税の変更に注意

友人と一緒に買い物をする場合や、旅行者本人がお土産を選ぶ場合に関わってくるのが免税の仕組みです。
2026年11月1日の購入分から、消費税の免税制度は「リファンド方式」に変わります。

観光庁の消費税免税店サイトの旅行者向け案内によると、主な流れは次のとおりです。

  • 免税店では、いったん消費税込みの価格で支払う
  • 対象は、同じ店舗で1日に税抜5,000円以上買った場合
  • 購入日から90日以内に、出国時に空港や港の端末でパスポートを提示し、税関の確認を受ける
  • 持ち出しが確認されたあとに、消費税相当額が返金される
  • 確認のときは買った品をすべて手元に持っている必要があり、荷物を預けたあとでは手続きできない

和小物をまとめ買いした友人には、「空港で荷物を預ける前に手続きしないと、税金が戻らないよ」と伝えておくと喜ばれます。

帰国の直前に買い足したい方には、空港近くのお店も便利です。
2026年10月4日には、羽田空港第3ターミナルに直結する羽田エアポートガーデンに、かんざし屋wargoがオープンしました。

まとめ

外国人観光客に和小物を贈るとき、私が大切にしているのは次の5つです。

  • 日本人が使っても「いいな」と思えるか
  • 使い方をひと言で説明できるか
  • 軽くて壊れにくく、持ち帰れるか
  • 相手の文化で引っかかる品ではないか
  • 産地や背景を伝えられるか

観光庁のデータを見ると、和小物を選ぶ旅行者は安さではなく、日本らしさやつくりの良さに惹かれています。
欧米の方には和小物を主役に、東アジアの方にはお菓子に和小物を添える形にすると、外れにくくなります。

品物そのものと同じくらい、渡すときのひと言が記憶に残ります。
かんざしを挿してみせたり、箸の産地を話したりする時間ごと、日本のお土産として持ち帰ってもらえたらうれしいですね。

Last Updated on 2026年10月12日 by pt2mob