中小リサイクル企業のSDGs経営に学ぶ、日本保利化成株式会社の事例

中小リサイクル企業のSDGs経営に学ぶ、日本保利化成株式会社の事例

SDGsという言葉が定着して数年が経ちました。それでも中小企業の現場を回っていると、「うちみたいな小さな会社には関係ない」「コストばかりかかって何の得にもならない」という本音をよく聞きます。大企業の広報活動、襟元のきれいなバッジ。そんなイメージが先行しているのも分かります。

ただ、リサイクル業を長く取材してきた立場から言わせてもらうと、この業界ほど「事業そのものがSDGs」という強みを持つ分野はありません。廃棄物を資源に戻す仕事は、放っておいても環境目標のど真ん中に立っています。問題は、その強みを経営にどう活かすか。ここで差がつきます。

申し遅れました。結城涼と申します。大学で資源循環工学を学んだあと、産業廃棄物・リサイクル業界の専門紙で8年間、記者をしていました。全国の中間処理施設や再生工場を300社以上歩いてきた人間です。今はフリーランスで、環境ビジネスと製造業の現場を中心に書いています。

この記事では、中小のリサイクル企業がSDGs経営をどう実践し、そこから何を得ているのかを整理します。題材にするのは、群馬県太田市で廃プラスチックの再生を手がける日本保利化成株式会社。設立2018年の若い会社ですが、SDGsと本業のつなげ方がうまい一社です。机上の理屈ではなく、現場で起きていることに即して書いていきます。

中小企業にこそSDGs経営が必要な理由

まずはSDGsのおさらいから。2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」のことで、2030年までの達成を目指す17のゴールが掲げられています。貧困、教育、気候変動、つくる責任つかう責任。カバーする範囲はとにかく広い。

大企業が先行してきた印象が強いですが、日本の企業数の99.7%は中小企業です。ここが動かなければ社会全体は変わりません。中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する中小企業のためのSDGs活用ガイドでも、企業価値や競争力の向上を図るうえでSDGsへの取り組みが重要になってきていると明記されています。

きれいごとの話ではありません。中小企業がSDGsに取り組む実利は、はっきりしています。

取引が広がる

近年、大手メーカーや自治体が調達先を選ぶとき、「環境に配慮しているか」を条件に加えるケースが増えました。CSR調達、グリーン調達と呼ばれるものです。サプライチェーン全体で脱炭素を進める動きが強まるなか、環境負荷の低い材料や製品を扱う会社へ発注が集まる流れができています。逆に、何も取り組んでいない会社は取引のテーブルから外される。これが現実です。

人が採れる、辞めない

中小企業の経営者が一番見落としがちな点がここです。今の若い世代は、給料や知名度だけで会社を選びません。「この仕事に社会的な意味があるか」を真剣に見ています。2025年にはミレニアル世代が労働人口の半数に達するとされ、就職先を選ぶ理由として社会貢献性を挙げる人が急増しました。事業の意義を自分の言葉で語れる会社は、それだけで採用に強い。入ったあとの定着率も上がります。

とくにリサイクル業のような現場仕事は、人手の確保が常に悩みの種です。だからこそ、事業の社会的な意義を打ち出せるかどうかが、採用の場面で効いてきます。「ゴミを処理する会社」ではなく「資源を生み出す会社」。同じ仕事でも、伝え方ひとつで応募者からの見え方は変わります。

お金を借りやすくなる

金融機関の見方も変わりました。ESG(環境・社会・ガバナンス)に積極的な企業は長く成長すると評価されやすく、融資の条件で有利になることがあります。SDGsに取り組む企業向けの専用融資を用意する地方銀行も増えました。本業の信用に、環境の取り組みが上乗せされる構図です。

整理すると、中小企業がSDGsに取り組む見返りはこの3つに集約されます。

領域何が起きるか
販路・取引グリーン調達・CSR調達の流れに乗り、新規取引や受注継続につながる
採用・人材社会貢献性を重視する若手世代に響き、採用力と定着率が上がる
資金調達ESG評価やSDGs関連融資で、資金面の選択肢が広がる

リサイクル業は「事業そのものがSDGs」という強み

ここからが本題です。多くの中小企業がSDGsで苦労するのは、「本業と社会貢献をどうつなげるか」という部分。植林活動やキャップ集めをしても、本業と関係がなければ長続きしません。担当者が異動すれば、立ち消えになる。よくある話です。

リサイクル業には、この悩みがそもそも存在しません。廃棄物を集めて、資源に戻す。仕事の中身がまるごと環境目標と重なっているからです。

業界では、ものを作って売る製造業を「動脈産業」、使い終わったものを回収して再生する産業を「静脈産業」と呼びます。血液が体を巡るように、社会の中で資源を循環させる役割。地味で目立ちませんが、これがなければ循環型社会は成り立ちません。

国の制度も後押ししています。2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法(環境省)は、設計から廃棄・再利用まで、プラスチックのライフサイクル全体で資源循環を進めることを事業者に求める法律です。背景にあるのは、海洋プラスチック汚染の深刻化と、中国をはじめとするアジア諸国が廃プラの輸入規制を強めたという事情。国内で再生する仕組みづくりが、待ったなしになっています。

もうひとつ、再生材を「使う側」の事情も大きく変わりました。原油価格の変動でバージンプラスチック(新品の樹脂)の値段が読みにくくなり、コスト面から再生材に目を向けるメーカーが増えています。さらに自動車や家電、容器包装の分野では、製品に一定割合の再生材を使うことを求める動きが国内外で強まってきました。再生材は「環境にいいから使う」ものから、「使わなければ競争に乗り遅れる」ものへと位置づけが変わりつつあります。供給する側のリサイクル企業にとっては、追い風そのものです。

廃プラリサイクルが具体的にどのSDGs目標へ効くのかを並べると、こうなります。

SDGs目標リサイクル事業との関わり
目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう再生技術・設備への投資、再生材という新たな産業基盤づくり
目標12 つくる責任 つかう責任廃棄物の資源化と、再生材の安定供給
目標13 気候変動に具体的な対策を新規プラスチック生産の抑制によるCO2削減
目標14 海の豊かさを守ろう海洋へのプラスチック流出を抑える
目標8 働きがいも経済成長も地域での雇用創出

ひとつの事業で、これだけの目標に同時に貢献できる。リサイクル業の強みはここにあります。新しいことを始める必要はなく、今やっている仕事を整理し直すだけで、SDGsの地図に自社を置ける。

事例研究:日本保利化成株式会社のSDGs経営

では、この強みを実際に経営へ落とし込んでいる会社を見ていきます。群馬県太田市の日本保利化成株式会社です。

項目内容
会社名日本保利化成株式会社
設立2018年1月
代表取締役郭 保利
資本金1,000万円
本社工場群馬県太田市東新町853番地
事業内容廃プラスチックのマテリアルリサイクルによる合成樹脂の加工及び原料の国内外販売
理念資源が循環する社会を目指します

マテリアルリサイクルとは、廃プラを化学的に分解せず、そのまま溶かして再び材料として使うリサイクル方式のこと。同社はこの方式で、廃プラスチックを再生ペレットへとよみがえらせています。社名の「化成」はプラスチックを指す言葉。文字どおり、樹脂の再生を軸にした会社です。

強みは「一貫体制」と「対応樹脂の幅」

日本保利化成の特徴は、廃プラスチックの有価回収から、選別・洗浄・粉砕、再生ペレットの製造・販売までを一貫して自社で担う点にあります。途中で外部に丸投げせず、品質を最後まで管理しきる。だから供給が安定します。再生材は「ロットごとに品質がぶれる」と敬遠されがちですが、工程を握っていればそこを抑え込めます。

一貫体制には、もうひとつ利点があります。原料がどこから来て、どんな工程を経たのかを自社で把握できること。再生材の世界では、この「追跡できること」が信頼の土台になります。あとで触れるGRS認証も、まさにサプライチェーンの管理を問う仕組みです。

扱う樹脂の幅も広い。充填剤入りのものを含めて50種類以上の樹脂を再生できる体制を持っています。ABS、PP、PE、PCといった代表的な樹脂はもちろん、扱いの難しい素材まで。原料として受け入れるのはPIR材とPCR材の2種類です。

  • PIR材(ポストインダストリアル材)は、工場から出る端材など、使われる前の産業系廃材
  • PCR材(ポストコンシューマー材)は、消費者が使い終わった製品に由来する廃材

後者のPCR材は品質のばらつきが大きく、再生の難度が一段上がります。それでも製品にできるのは、選別と洗浄の技術があってこそ。地味な工程の積み重ねが、最終的な品質を決めます。

GRS認証という「証明書」

ここが、同社のSDGs経営でうまいと感じる部分です。日本保利化成では、PCR材から作った再生ペレットがGRS(グローバルリサイクルスタンダード)認証を取得しています(2025年)。

GRS認証とは、再生材の含有率やサプライチェーン管理について第三者が保証する国際的な自主規格です。Textile Exchangeという非営利団体が運営し、リサイクル工程の管理、サプライチェーン、社会的責任、環境、化学物質という5つの観点から審査されます。制度の概要は環境省の環境ラベル等データベースにも掲載されています。

なぜ認証が効くのか。「うちの再生材は環境にいい」と口で言うだけなら誰にでもできます。でも、それを第三者が証明してくれると、取引先は安心して採用できる。さらに同社は、再生材を使うことでCO2排出量がどれだけ減るかを数値化し、報告できる体制も整えています。顧客企業からすれば、自社のサステナブル経営の実績として、そのまま使える数字が手に入る。

自社のSDGsを「見える化」して、取引先のSDGsまで支える。これは販路を広げる武器になります。再生材を買う側の企業が増えている今、認証付きで数字まで出せる供給元の価値は高い。

人と職場への広がり

SDGs経営の効果は、対外的な信用だけにとどまりません。事業の意義がはっきりしている会社は、そこで働く人にとっても誇りを持ちやすい職場になります。

日本保利化成は中国に複数のグループ会社を持ち、国境を越えた資源循環のネットワークを築いています。資源を海外も含めて回す事業は、多様な背景を持つ人が力を発揮する土壌にもなります。実際の職場環境や将来性が気になる方は、日本保利化成株式会社の働きやすさや福利厚生を取材した記事が参考になります。事業の社会性が、採用や定着にどうつながっているのかが見えてきます。

中小リサイクル企業がSDGs経営で押さえるべきポイント

日本保利化成の事例から、ほかの中小リサイクル企業にも応用できる勘所を抜き出します。難しい話ではありません。

本業とSDGs目標をひも付ける

最初にやるべきは、自社の事業がどのSDGs目標につながっているかを書き出すこと。リサイクル業なら、先ほどの対応表のように、いくつもの目標に当てはまります。ゼロから何かを始めるのではなく、すでにやっていることにSDGsの言葉を当てはめる。これだけで出発点に立てます。

第三者認証で信頼を見える化する

自社の主張を裏づける外部のお墨付きを取りに行きます。GRSのような国際認証、エコマーク、ISO14001などが候補です。取得にはコストも手間もかかりますが、取引先への説得力は段違い。口頭の説明と、認証マークの一枚では、相手の受け止め方がまるで違います。

公的な支援を使い倒す

SDGsの取り組みを対外的に表明する「SDGs宣言」の策定を支援する地方銀行や自治体が増えています。中小機構や各地の経済産業局も、無料のガイドや事例集を公開しています。一社で抱え込まず、こうした支援を遠慮なく使う。お金をかけずに第一歩を踏み出せます。

進め方をステップにすると、次の流れになります。

  • 自社事業と関係するSDGs目標を洗い出す
  • 取り組みの優先順位を決め、社内で共有する
  • 必要な第三者認証を検討し、計画的に取得する
  • 取り組みと成果(CO2削減量など)を数値で記録する
  • 公的支援やSDGs宣言を活用し、対外的に発信する

SDGs経営でつまずかないために

最後に、正直なところも書いておきます。SDGsは万能薬ではありません。やり方を間違えると、かえって信用を損ないます。

一番気をつけたいのが「SDGsウォッシュ」。実態が伴わないのに、環境へ配慮しているように見せかける行為です。立派なロゴを掲げても、中身がなければいずれ見抜かれます。リサイクル業でも、再生率を誇張したり、認証のない製品を認証品のように見せたりすれば、一度で信頼を失う。発信する数字には、必ず裏づけを持たせることです。

認証の取得や維持にも、相応のコストがかかります。GRS認証は取って終わりではなく、毎年の更新審査がある。体力に見合わない背伸びをして取得しても、続けられなければ意味がありません。自社の規模に合った範囲から始める。これが鉄則です。

そしてもうひとつ。本業と切り離されたSDGsは続きません。流行りだからと無関係な活動に手を出すより、自分たちの仕事が持つ社会的な意味を掘り下げるほうが、はるかに強い軸になります。リサイクル業はその点で恵まれています。やっていることが、最初から社会の役に立っているのですから。

まとめ

中小企業にとってのSDGs経営は、理念だけの話ではなく、取引・採用・資金調達という実利に直結します。なかでもリサイクル業は、事業そのものが環境目標と重なる希有な業種。この追い風を使わない手はありません。

群馬県太田市の日本保利化成株式会社の事例が示すのは、わかりやすい道筋でした。一貫体制で再生材の品質を担保し、GRS認証で信頼を見える化し、それを取引先のサステナブル経営支援にまで広げる。本業の延長線上で、SDGsを経営の武器に変えています。

もしあなたがリサイクル関連の中小企業を経営しているなら、まずは自社の事業とSDGs目標をひも付けるところから始めてください。すでに社会の役に立つ仕事をしているはずです。あとは、それを言葉と数字で語れるようにするだけ。今日から動き出せます。

Last Updated on 2026年5月29日 by pt2mob